着物の生地はたった5種類|織り方や産地で呼び名や利用シーンが変わる

生地の種類
★この記事におすすめの方!
  • 着物の生地について知りたい方
  • なぜ着物の値段が違うのか気になる方
  • 利用シーン別で着られる着物を知りたい方

着物の生地と言われると色々な呼び名があったりして、何が何だか分からなくなりますよね(笑)

私も初めは種類や違いについて、全く理解できなかったので、皆さんが着物を知る際に少しでも参考になればと思いますので、是非読んでみてください!

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金沢着物女子

専門用語も多くて分かりづらいんだよね、、(笑)

生地の種類

まず初めに生地の種類についてですが、実は生地の種類はたった5種類しかないんです!

皆さんが生地の違いとして気になっているであろう物は『織り方』の違いになるので、まずはそもそもの生地の違いを説明します。

絹(正絹)

正絹(しょうけん)は、着物の中でも最高級とされており、絹糸100%の生地を指します。

絹糸は、蚕の繭から採取するもので、光沢があり、肌触りも滑らかで、着用感が非常に良いのが特徴です。染色が美しく発色するため、振袖や訪問着などのフォーマルな場面でよく使用されることが多く、高級感が漂います。

また絹糸は、生糸(きいと)と紬糸(つむぎいと)の2種類に分けることもでき、より上質な繭から採取したものが『生糸』で、主に振袖や訪問着に使用される糸のことを指します。

一方、『紬糸』は、生糸には適さないとされた繭で紡がれたもので、紬の着物は『フォーマルではないオシャレ着』として分類されています。

光沢や滑らかさはないものの、節があり独特の風合いや落ち着きを持つのが特徴です。

ウール

ウールは、保温性が高く秋冬に最適の生地です。ウール独特の柔らかさと温かみがあり、カジュアルな場面でよく着用されます。

また、シワや汚れがつきづらく、自宅で手洗いができるので、お手入れが比較的簡単で、日常使いに適しています。

ただ、生地が厚いため、夏場は暑く、ゴワついたり肌がチクチクしたりする点が、デメリットになります。

化繊(ポリエステル)

化繊やポリエステルは、ウール同様にシワになりにくく、手入れが簡単です。雨の日や汚れが気になる場所でも気軽に着られます。

最大の特徴が、非常に安価という点で、普段着や気軽なイベントに向いています。

ただ、通気性や吸湿性が悪く、夏は暑く冬は寒い点がデメリットとして挙げられます。

は、夏にぴったりの涼しい生地です。

軽くて通気性が良く、汗をかいても快適に過ごせるため、カジュアルな場面での着用が一般的です。

染色しづらい生地のため、ナチュラルな風合いがある点も特徴ですが、シワがつきやすくゴワつくといった点がデメリットとして挙げられます。

綿

綿は、肌に優しく吸湿性に優れた生地です。

主に浴衣や普段着の着物に多く使われ、カジュアルでリラックスした雰囲気が特徴です。

また、自宅洗いもできるため、お手入れが簡単な反面、縮みやすくシワになりやすい点がデメリットです。

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金沢着物女子

意外と用途は洋服と似てるんだね!

種類別まとめ

主な生地5種類について説明してきましたが、まとめた方が分かりやすいと思いますので、ざっと表にしてまとめました!

比較して見たいという方はこちらをご参照ください。

種類触り心地メリットデメリットTPO
絹(正絹)滑らか柔らかい美しい光沢
発色が良い
高価手入れが難しいフォーマル
公式行事
ウール柔らかい暖かい保温性が高い
耐久性がある
通気性が低い
重い
カジュアル
日常
化繊(ポリエステル)滑らか軽いシワになりにくい
手入れが簡単
風合いが劣る
静電気が起きやすい
普段着
イベント
さらっとしている硬い通気性が良い
涼しい
シワになりやすい
硬い
夏のカジュアル
日常
綿柔らかい肌に優しい吸湿性が高い
手入れが簡単
シワになりやすい
耐久性が低い
普段着
浴衣

織り方の種類|平織り

次に織り方の種類について説明していきます。

主に皆さんが聞いたことのある呼び方は、その織り方の代表例となりますので、そちらも併せて説明しますね。

平織りは、縦糸と横糸が1対1で交互に組み合わさるシンプルな織り方で、最も種類が豊富な織り方です。

また、耐久性が高く、どんなシーンにも使いやすくて、着物から普段着まで幅広く活躍します。

代表的な種類はこちらです。

上布(じょうふ)

上布は、主に麻や木綿を用いた平織りの織物で、通気性が非常に高いのが特徴です。

夏用の涼しい素材として、涼感を求められる場面で活躍してくれ、代表例としては、新潟の越後上布や石川の能登上布、沖縄の宮古上布などが挙げられます。

メリットとしては、非常に軽く、さらりとした肌触りで快適な着心地があり、また、通気性が良いため、湿度の高い日本の夏でも涼しく過ごすことができます。

ただ、シワになりやすく、保管やメンテナンスに注意が必要です。

その他にも麻特有の硬さがあるため、柔らかい質感を好む方には向かない点がデメリットとなります。

利用シーンとしては、主に夏のカジュアルなシーンや日常の外出時に適しており、浴衣や夏着物として人気があります。

また、涼しさが求められる夏祭りや花火大会にも最適ですね。

大島紬(おおしまつむぎ)

大島紬は、奄美大島で生産される平織りの絹織物です。

泥染めなどの独特な染色技法を使用し、非常に細かい絣模様が特徴です。

紬特有の表面が凸凹した『節(ふし)』が無い生糸で織られているため、手触りが良く、光沢があります。

独特の絣模様は、職人の手による精緻な技術の結晶であり、芸術的に価値が非常に高いです。

ただ、職人技で織られる織物だからこそ、非常に高価であり、メンテナンスにも気を使うため、取り扱いに注意が必要です。

利用シーンは、カジュアルな装いからパーティーのようなセミフォーマルな場面まで使用できますが、あまりフォーマルな場には着用しない着物に分類されています。

牛首紬(うしくびつむぎ)

牛首紬は、石川県白山市で生産される、大島紬同様に高級紬の一種です。2匹の蚕が共に一個の繭にした『玉繭』で作られる物で、特徴的な厚手の生地で、独特の重量感と光沢があります。

生地の耐久性が、生地で釘も抜けるほど強いため、別名『釘抜紬(くぎぬきつむぎ)』とも呼ばれます。

メリットとしては、丈夫で長持ちし、使い込むほどに味わいが増す点や、シンプルながらも上品な光沢がある点が挙げられ、格調高い印象を与えます。

ただ、硬めの質感で重さがあり、着慣れていないと疲れることがあります。また、他の紬と同様に高価であるため、予算に余裕が必要です。

利用シーンは、大島紬同様に、カジュアルな装いからセミフォーマルな場面まで使用できますが、あまりフォーマルな場には着用しない着物に分類されています。

縮緬(ちりめん)

縮緬は、絹糸に強い撚り(より)と呼ばれるねじれをかけてから織ることで、表面に独特のしぼ(細かいシワ)が生まれる織物で、京都の京縮緬や滋賀の丹後縮緬が有名です。

メリットとしては、しぼによって生地に立体感が生まれ、光の加減で独特の陰影が楽しめます。

また、シワになりにくく、洗練された印象を与えつつ、色合いも深く、染色の映える織物です。

ただ、柔らかい織物のため、強い力を加えると型崩れやシワが発生する場合があります。

また、保存中にしぼが伸びることがあるため、適切な保管が必要です。

利用シーンは、結婚式などのフォーマルからカジュアルまで幅広く利用されており、訪問着や色無地として、茶道や正式な訪問の場での装いに適しています。

羽二重(はぶたえ)

羽二重は、良質で撚りのない生糸を用いて、非常に密度の高い平織りをした絹織物です。

滑らかで光沢のある仕上がりが特徴で、最高級の絹織物として評価されています。

メリットとしては、美しい光沢と滑らかな手触りがあり、高級感にあふれています。

しなやかで柔らかく、色の発色が非常に良いため、写真を撮る際など、華やかな染め柄が非常に綺麗に映ります。

ただ、汚れや傷がつきやすく、取り扱いには細心の注意が必要、且つ、湿気に弱いため、湿気対策を考慮した保管が求められます。

利用シーンは、主にフォーマルな場面で使用され、振袖や黒留袖、白無垢などの結婚式衣装に用いられるため、公式行事や格式の高い席での装いに適しています。

織り方の種類|綾織り

綾織りは、縦糸と横糸が斜めに交差する織り方で織り目が斜めに見えるのが特徴です。

生地が柔らかくて、シワになりにくいのが嬉しいポイントで光沢もあり、フォーマルな場でも使える華やかさがあります。

代表的な種類はこちらです。

お召織り

お召織りは、撚りの強い糸を使用し、独特の光沢と風合いを持つ綾織りの一種で、生地がしっかりとしていて、しっとりとした質感が特徴です。

メリットとしては、しっかりとした生地感があり、シワになりにくく、お手入れが比較的簡単です。

また、高級感がありながらも、落ち着いた風合いで、幅広い年齢層に適しています。

ただ、硬めの質感があり、柔らかい質感を好む方には不向きな側面もあり、他の絹織物と同様、湿気に注意が必要です。

利用シーンは、フォーマルな行事やセミフォーマルな場面での使用が一般的で、特にお茶会や公式の集まり、落ち着いた社交の場などで活躍します。

織り方の種類|繻子織り(しゅすおり)

繻子織りは、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が交差する点をなるべく目立たないようにしているため、光沢があり、滑らかな手触りが特徴の織り方です。

触り心地がとても良く、染め上がりが美しいため、非常に高級感が漂います。

そのため、フォーマルな着物に多く使われるため、振袖や訪問着に多く用いられ、特別な場面で大活躍です。

代表的な種類はこちらです。

綸子(りんず)

綸子は、経糸と緯糸共に撚っていない生糸を使用し、地模様が浮き出るように織られた絹織物で、独特の光沢と艶があり、高級感があります。

メリットとしては、美しい地模様と光沢がある点で、華やかな場にふさわしい品格を備えています。

また、染色の発色が非常に良く、鮮やかな色合いが楽しめます。

ただ、織りの密度が高いため、通気性にやや劣ることがあり、価格面でも高価で取り扱いが難しい場合があります。

利用シーンは、振袖や訪問着として、結婚式や公式の場、特別なイベントなどのフォーマルなシーンで使用されます。

織り方の種類|もじり織り(からめ織り)

もじり織り(からめ織り)は、経糸ねじり合わせてから緯糸を通すことで、織り目に独特の透かし模様や立体感を作り出す技法です。この技法により、軽やかで通気性の良い生地になり、主に夏用の着物や帯に使用されます。見た目に涼しげな印象を与えるため、夏のカジュアルなシーンで人気です。

代表的な種類はこちらです。

絽(ろ)

は、経糸の間隔を一定間隔で開けて織ることで、透け感を持たせた絹織物で、軽やかで涼しげな見た目が特徴です。

メリットとしては、通気性が非常に良い点で、夏の暑い時期でも涼しく過ごせます。軽量で、見た目にも涼しさを感じさせるため、視覚的にも涼やかです。

ただ、生地の透け感が強いため、インナーや下着の選び方に注意が必要です。

また、保存時にシワがつきやすい場合があるため、メンテナンスに手間がかかる可能性があります。

利用シーンは、夏のフォーマルな行事やセミフォーマルな場面での使用が一般的で、『夏着物といえば絽』と呼ばれており、主に7~8月に着用する着物は絽になります。

紗(しゃ)

は、網目のように全体的に隙間を開けて織った透け感のある絹織物で、非常に軽く、涼やかな風合いが特徴です。

絽と似ている点がありますが、違いとしては、絽が『一定間隔』で隙間があるのに対して、紗は『全体的に』隙間がある点です。

メリットとしては、軽くて通気性が高く、見た目にも涼しげな印象を与えます。夏の暑い時期に最適で、清涼感を演出します。

ただ、絽同様に非常に薄い素材のため、透け感が強く、下着やインナーに気を使う必要があります。また、デリケートなため取り扱いに注意が必要です。

利用シーンとしても、絽同様に夏のフォーマルな場面やカジュアルなイベントに適しています。夏祭りや茶会などでの使用が一般的です。

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金沢着物女子

紬や縮緬とかは聞いたことあったけど、生地の種類じゃなくて織り方の種類だったんだ!

産地別の織り方や染め方

産地別でも地域柄がある独特の織り方や染め方があったりしますので、有名どころの地域を5つに絞って説明します。

京都

京都は、言わずもがな、日本の伝統的な織物の中心地です。

西陣織(にしじんおり)は、豪華な織りの帯で有名で、友禅染めを代表する京友禅は、手描きで繊細な模様が特徴です。先ほど記載した縮緬も京都の特産品で、しぼが美しい織物とされています。

石川(金沢)

石川は京都の京友禅と同様に友禅染めである、加賀友禅で知られています。手描きの友禅染が美しく、鮮やかな色彩が特徴です。また、牛首紬や能登上布(のとじょうふ)などの上布も有名で、涼しい夏の着物として愛用されています。

東京

東京の江戸小紋(えどこもん)は、細かい模様を染めた技法が特徴です。江戸時代からの伝統を受け継ぎ、現代でも人気があります。

また、京友禅と加賀友禅と並んで日本三大友禅に挙げられる東京友禅(江戸友禅)も、東京の代表的な染色技術で、シンプルながらも洗練されたデザインが魅力です。

新潟

新潟は、雪国ならではの技術を持つ地域で、特に結城紬(ゆうきつむぎ)や小千谷縮(おぢやちぢみ)が有名で、自然な風合いが魅力です。これらの織物は手作業で作られるため、一点一点に個性があります。

また、十日町友禅と呼ばれる友禅染めも有名で、日本三大友禅とはちょっと異なり、若手の職人が多く様々な技法を取り入れているため、新感覚で制作される華やかな作品が多いのが特徴です。

沖縄

沖縄は、独自の文化と織物技術を持つ地域です。琉球紅型(りゅうきゅうびんがた)は、鮮やかな色彩と大胆な模様が特徴の染め物です。また、芭蕉布(ばしょうふ)や宮古上布(みやこじょうふ)など、涼感のある生地も沖縄ならではです。

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京都や金沢などは聞いたことがあったけど沖縄とかも有名なんだね!

なぜ安く販売できる着物販売店があるのか

ここまで様々な生地や織り方の種類について説明してきましたが、皆さんも気になるであろう『なぜ着物の販売店で高いところと安いところがあるのか』について、解説していきます。

生地や染め方でコストカット

安売りできるのは大手チェーン店が多かったりしますが、結論、着物の生地や織り方、染め方などで可能な限りコストカットしてるため、安く販売できるということになります。

生地でいえば、安価な化繊やポリエステルなどの素材を使用することで、品質を一定水準で保ちながらもコストを抑えています。これにより、消費者に手頃な価格で商品を提供することが可能となっています。

ただ、違いでも記載したように、肌触りや機能性などはどうしても質の良い生地に劣る部分が多くなってしまいます。

また、絹などの良い生地を使用するといっても、『目付』と言って、生地の密度が濃いか薄いかを判断する指標もあったりします。

特に安いところの生地は、基本的に中国産の絹やポリエステルを配合するため、目付が悪く、生地自体が軽く仕上がっています。

正絹で作られた着物と持ち比べをしてみると一発で違いが分かるので、興味がある方は一度試してみても良いかも知れません!

染め方の違いについては、こちらの記事で説明していますので、併せてご確認ください。

安い着物販売店は良いのか

正直なところ、安い着物販売店はあまりおすすめしない、というのが私の個人的な考えです。

なぜかというと、良くチラシやテレビCMをみると、例えば成人式の振袖であれば『振袖が4万円からレンタル可能!』のような安さを売りにしたキャンペーンが多く出されていますが、実際に店舗にいくとその値段は『振袖本体のみの値段』で、帯や和装小物、着付け、ヘアセット、前撮り諸々がオプションとなり、気付いたら20万を超えてしまうケースがほとんどなのです。。。

そのため、結局安い着物や振袖であっても、質の良い着物を取り扱う地域の呉服店と変わらない値段になってしまうため、それであれば最初から安い着物ではなく、質が良く適正価格で販売しているような着物販売店で選んだ方が、断然お得です!

実際に、私たちの濱上呉服店では、ポリエステルではなく、すべての振袖が絹の生地を使用しており、染め方もインクジェットプリントと言った安価な物ではなく、手描き染めや型染めといった、職人が手作業で作成した着物のみを取り扱っています。

さらに、金額も着付けやヘアセット、小物系全てコミコミの値段で販売レンタルをしていますので、気が付いたら値段が上がっている、と言った心配も全くありません!

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安さは魅力だけどそう言われると大手チェーン店以外も見てみた方が良いね!

こちらで大手チェーン店と呉服店の違いなどをこちらの記事でまとめていますので、気になる方は併せて読んでみてください。

まとめ

今回は生地の違いについて、まとめましたが、生地や織り方、産地によって、見た目や着心地、価格が大きく異なることが分かりましたでしょうか。

それぞれの特徴を理解することで、自分に合った着物選びに役に立てるとと嬉しいです!

また、安売りされている着物には、その価格の理由があることを知っておくことも大切です!

特に成人式などの振袖は、一生に1回の大事なお祝い事ですので、大切な一着を選ぶ際には、品質と価格のバランスをよく考え、信頼できるお店での購入をおすすめします。

私たちは金沢で呉服店を営んでいますが、質の良い着物や振袖のみを取り扱っていますので、気になる方は是非一度ご連絡やご相談いただくか、インスタやHPなどを覗いて商品をみてください!

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