金沢の呉服店が加賀友禅を徹底解説|『歴史・技法・友禅作家』の魅力

- 加賀友禅を聞いた事はあるけどよく知らない方
- 着物をもっと知りたい方
- 安物ではなく本物の着物をお探しの方
『金沢着物ライフ』の記念すべき第一弾。地元石川県で昔から愛されて日本三大友禅にも挙げられる『加賀友禅の魅力』について、65年以上地元金沢で呉服屋を営む独自の目線で紹介していきます!

金沢着物女子
加賀友禅ってよく聞くけどあまり詳しくは知らないんだよね、、笑

そもそも加賀友禅とは
石川県金沢市周辺で作られている手描き友禅染めの着物です。京友禅の創始者・宮崎友禅斎が加賀に移り住んだことから加賀友禅という名が付けられたと言われています。
日本三大友禅に名を連ねていることもあり、フォーマルの最高峰と称されており成人式や結婚式、その他式典など公の場ではまだまだ幅広く着用されています。
加賀友禅の『歴史』
歴史は古く約500年ほど前に遡ること15世紀頃、加賀独自の無地染めであった『梅染』がルーツと言われています。
また、加賀には古くから『兼房染(けんぼうぞめ)』『色絵』『色絵紋』など多くの染色技法が伝えられており、江戸時代には『加賀の御国染』として確立。18世紀に入り加賀友禅の祖である、京都の宮崎友禅斉がこれらの技法を基に、加賀友禅の技法を確立・発展させたと言われています。その後、加賀藩による庇護や奨励のもとで育まれ、数々の技法が専業化されました。
しかし、近代に引き継がれた後、戦前戦後の奢侈(しゃし)禁止令などによって打撃を受けた時期もありましたが、宮崎友禅斎生誕300年祭の頃を契機に再び栄えていきます。
その後も、さらなる技術の進歩や協同組合加賀友禅染色団地の設立が続き、1955年(昭和30年)に友禅作家である木村雨山(きむらうざん)が、加賀友禅作家として初めて重要無形文化財保持者 (人間国宝)に指定されたことで、加賀友禅が一躍全国に認知されることとなり、更には1975年(昭和50年)には国の伝統的産業工芸品に指定されております。
これから見ても分かる通り、加賀友禅の祖である宮崎友禅斉が地道に作りあげた加賀友禅の技術や技法を地域を挙げて守り抜き、今の地位を確立しています。


金沢着物女子
加賀友禅にもそんな歴史があったなんて、、、宮崎友禅斉ってすごい人なんですね!
加賀友禅の『魅力』
そのような加賀友禅には多くの魅力がありますが、ポイントを3つに絞って説明していきます。
魅力【加賀五彩】
加賀五彩とは、藍、臙脂(えんじ)、黄土、草、古代紫の5色を指し、加賀友禅の基調になっている色となります。
現代の友禅作家は、加賀五彩に基づきながらも時代の好みや作家自身の個性を反映させて全体の配色を決めており、色そのものが友禅作家の腕の見せ所です。

魅力【手書き】
加賀友禅の工程では、定規や補助的な機械などを使って効率的に出来る部分もあえて作家による手描き工法にこだわっています。現在も多くの作家や職人が活動を行っており、根気のいる手作業と熟練の技によって伝統技法が支え、伝えられています。全て手作業で時間をかけて創作するというのは作業時間を有してしまいますが、全て手作業にこだわるからこそ、繊細で緻密な味わい深い作品が出来上がります。

魅力【技法】
加賀友禅ならではの技法で『外ぼかし』『虫食い』というものがあります。
外ぼかしとは、模様の外側から中心に向かっていくにつれてぼかしていく、という加賀友禅の中でも特徴的な技法です。外側を濃く、中心を淡くすることで、より立体的で写実的な印象を与えてくれます。
京友禅もぼかしはありますが、加賀友禅とは逆で中心から外側に向かってぼかしをいれていきます。そのため、ぼかしの入れ方で友禅の種類を見分ける事も可能です!
虫食いというのは、元々加賀友禅以外では中々見られなかった加賀友禅独特の技法です。ただ、最近では京友禅でも虫食いを描くケースも増えてきており、大元である京友禅作家も真似するほど、魅力的な技法になります!描かれている葉の一部にあえて黒く小さな点を描くことで本当に葉が虫に食われているかのような描写になり、よりリアリティのある表現が可能です。
皆さんも作品を見る機会があったらぜひ虫食いを探してみてください!

こちらでも多くの加賀友禅の事例を記載しているので、気になる方はご確認ください。

金沢着物女子
隠れミッキーかのような遊び心があると興味を持ちやすいね!
加賀友禅を描く友禅作家さんとは
そのような綿密で細かな作品を全て手作業で創作するには、友禅作家である必要があり、作家になるためには加賀染振興協会への落款の登録が必要です。そのためには、工房を営む師の下で5年以上の修行を積んだのち、同協会の会員2名の推薦を得て協会の会員資格を得る、という流れがあります。そのため、協会を立ち上げて約50年で現会員数は140名程度と作家さんの数も限られています。
そういった作家さんが1点1点の着物を色味や柄な細部に至るまで手描きで創作されているため、同じような色や柄をプリントした着物とは味わい深さが全く異なるのは当然かと思います。
私はここに日本の伝統工芸品の良さが詰まっていると感じています!着物が普段着だった時代から現在は変容し、大半の人が着物を着るシーンは成人式、卒業式、友人の結婚式など限られてきているのが現状です。だからこそ、日本の伝統工芸である着物を守り世界に発信していくためにも、より本質・本物である友禅が注目を浴びても良いと考えています!


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今では世界で着物が街中で着られていたりする光景を見ると海外の方の関心もあるみたいだね!
加賀友禅の価格は?
加賀友禅は良い着物として認知されている一方、価格も通常の着物よりも高い、という認識もあるかと思います。実際、加賀友禅は認められた作家さんが1から手作業で制作しているため、どうしても現在流行っているデザインなどをプリントするインクジェットプリントの着物と比較すると高くなってしまいます。
価格もインクジェットプリントの振袖であれば数万~50万円くらいが相場ですが、加賀友禅の振袖であれば50万円以上するケースがほとんどです。
更に東京や京都といった都心部で販売される加賀友禅などの着物となれば、出店している立地も良いため、出店代が上乗せされ、高額な価格での販売が多くなりやすい傾向にあります。
その点、石川県で販売している我々濱上呉服店のような地域に根ざした呉服店であれば、同じ商品でも東京と比較し、100万円以上販売価格の差が出るケースもあります!
そのため、加賀友禅などの高級呉服の購入を検討される際は、その点も踏まえてご検討いただけるとより安価に品質の高い着物を購入できるかもしれません。
まとめ
加賀友禅の歴史から魅力まで紹介させていただきましたが、魅力は伝わりましたでしょうか?
個人的には外ぼかしや虫食いとかの技法で他の友禅との見分けが付くというのは、あまり着物を見慣れない方にとっても分かりやすいと思いますし、作家さんがあえて全て手作業で行っている点も自分の着物に愛着が湧くと思うますので、少しは伝わったんじゃないかな、と思います(笑)
また、もっと着物が大好きな人にしか理解されないニッチな魅力もたくさんあったりしますので、それはまた別の記事で紹介していきますね!


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